葬儀の後に執り行われる会食、いわゆる「精進落とし」は、遺族や参列者が故人を偲びながら食事を共にする大切な時間ですが、妊婦にとっては食事内容や衛生面において注意が必要な場面でもあります。まず、精進落としのメニューにはしばしば刺身や寿司などの生ものが含まれます。妊娠中は食中毒や寄生虫(アニサキスなど)、トキソプラズマ感染のリスクを避けるため、生ものの摂取は控えるのが医学的な常識です。あらかじめ妊娠していることが遺族に伝わっている場合は、配慮されたメニューに変更されていることもありますが、そうでない場合は、出された生ものを無理に食べる必要はありません。「医師から生ものを控えるよう言われておりますので」と一言添えれば、周囲に不快感を与えることなく、自分の健康を守ることができます。また、加熱調理されたものであっても、長時間室温に置かれていたものや、衛生状態に不安を感じる場合は箸を付けない方が安全です。アルコールについても同様です。献杯の際、グラスに注がれたお酒を一口だけ飲むという形式的な礼儀を求められることがありますが、これも無理に飲む必要はありません。ウーロン茶やジュースなどのソフトドリンクで代用し、形だけ参加すれば十分です。周囲に勧める人がいても、「お腹に赤ちゃんがおりますので」と笑顔で辞退しましょう。また、会食の席は往々にして長時間になりがちです。背もたれのない椅子や、狭い座敷での食事は、妊婦の腰や背中に大きな負担をかけます。もし座敷であれば、座椅子やクッションを借りるか、壁際に座らせてもらうなどの工夫をスタッフにお願いしましょう。さらに、会食会場は人が密集するため、空気の入れ替わりが悪く、誰かが吸っているタバコの煙(副流煙)が気になることもあります。受動喫煙は胎児に悪影響を与えるため、煙が来るような場所であれば、無理をせず途中で退席することも検討してください。会食は「親睦」の場でもありますが、妊婦にとっては「休息と栄養補給」の場であるべきです。自分のペースを守り、疲れを感じたら早めに切り上げて帰宅の途につくことが、無事に葬儀という1日を終えるための最後の関門となります。食事の場での振る舞い1つをとっても、自分と赤ちゃんを守るという強い意志を持ち続けることが大切です。