直葬という、最もシンプルな葬送の形を選んだ後、ご遺族の中には、時として、「本当にこれだけで良かったのだろうか」「故人を偲ぶ場が何もないのは、寂しいのではないか」という、一抹の不安や物足りなさを感じることがあります。儀式を省略したからこそ、その後の供養の形、故人を偲ぶ時間の持ち方が、より一層、重要になってくるのです。直葬は、決して「お別れの終わり」ではありません。むしろ、そこから始まる、新しい、そしてよりパーソナルな「偲びの形」の、スタートラインなのです。その代表的な形が、「お別れ会」や「偲ぶ会」です。これは、近親者のみで直葬を済ませた後、日を改めて、故人と親しかった友人・知人を招いて開く、無宗教形式の追悼のセレモニーです。堅苦しい儀式はなく、ホテルの宴会場やレストラン、あるいは故人が好きだった場所などを借りて、会費制で行われることも多くあります。会場には、故人の思い出の写真や愛用品を飾り、好きだった音楽をBGMとして流し、スライドショーでその生涯を振り返ります。参列者は、献杯をし、食事を共にしながら、故人との思い出を自由に語り合います。それは、悲しみにくれる「葬儀」というよりも、故人の豊かな人生を讃え、感謝を伝える、温かい「感謝祭」のような雰囲気を持つ、現代的な追悼の形です。また、よりプライベートな形で故人を偲びたい場合は、「手元供養」という選択肢があります。これは、分骨したご遺骨の一部を、小さな骨壷やペンダント、アクセサリーなどに納め、常に身近に置いて供養する方法です。仏壇を置くスペースがない現代の住環境にも適しており、いつでも故人の存在を感じ、語りかけることができるため、深い悲しみを癒やすグリーフケアとしても、大きな効果があると言われています。お墓を持たず、故人の遺志を尊重して、海や山へご遺骨を還す「自然葬(散骨や樹木葬)」も、直葬の後の新しい供養の形として広がっています。直葬という選択は、私たちに、伝統的な枠組みから解放され、故人との関係性や、自分たちのライフスタイルに最も合った、自由で創造的な「偲びの形」とは何かを、問いかけているのかもしれません。
直葬のその先、故人を偲ぶ新しい形