近年、直葬という葬送の形が急速に広がりを見せている背景には、現代人が抱える様々な事情と、それに合致する明確なメリットが存在します。その最大のメリットとして挙げられるのが、「経済的な負担の大幅な軽減」です。一般的な葬儀では、式場使用料、祭壇の設営費用、通夜振る舞いや精進落としといった会食費用、そして返礼品の費用など、多くの費用が発生し、その総額は100万円を超えることも珍しくありません。一方、直葬は、お通夜や葬儀・告別式といった儀式を一切行わないため、これらの費用が全くかかりません。必要となるのは、ご遺体の搬送・安置費用、棺や骨壷の費用、そして火葬料金といった、最低限の費用のみです。そのため、葬儀費用を20万円から40万円程度に抑えることが可能となり、経済的な事情で大規模な葬儀が難しい方々にとって、非常に現実的な選択肢となっています。第二のメリットは、「時間的・精神的な負担の軽減」です。通常の葬儀では、ご遺族は深い悲しみの中で、2〜3日間にわたり、多くの弔問客への対応に追われます。挨拶や気遣いに心身ともに疲弊してしまうことも少なくありません。直葬であれば、参列者がごく近親者に限定されるため、こうした対応の必要がなく、家族だけで静かに、そして穏やかに故人を見送ることに集中できます。高齢のご遺族にとって、体力的な負担が少ないことも、大きな利点と言えるでしょう。さらに、「故人の遺志の尊重」という側面も重要です。生前から「自分の葬式は大げさにしてほしくない」「残された家族に負担をかけたくない」「宗教的な儀式は不要だ」といった、明確な意思を示していた故人の場合、その願いを最も忠実に叶えることができるのが直葬です。また、天涯孤独の方や、親族と疎遠になっている方、あるいは生活保護を受けている方など、様々な社会的背景を持つ人々にとって、直葬は、尊厳を失うことなく、シンプルに人生の最期を締めくくるための、重要な社会的セーフティネットとしての役割も担っているのです。