直葬は、そのシンプルさと経済的なメリットから、魅力的な選択肢として映りますが、その一方で、安易に決定してしまうと、後で深い後悔に繋がる可能性のある、いくつかのデメリットと注意点が存在します。これらを事前に十分に理解し、家族間で共有しておくことが、後悔のないお別れのために不可欠です。まず、最大のデメリットとして挙げられるのが、「親族や友人・知人との間にトラブルが生じる可能性がある」という点です。直葬は、ごく限られた家族のみで見送る形式のため、故人と親しかった友人や、遠縁の親戚など、お別れをしたいと願っていた多くの人々が、その機会を完全に失ってしまうことになります。「なぜ、最後のお別れをさせてくれなかったのか」「せめて、お線香の一本でもあげたかった」といった不満や寂しさの声が、後日、ご遺族の耳に届き、人間関係に亀裂を生んでしまうケースは少なくありません。特に、親族の中に伝統的な葬儀を重んじる方がいる場合は、「故人が可哀想だ」「世間体として恥ずかしい」といった強い反対に遭う可能性もあります。直葬を選ぶ際は、必ず事前に、主要な親族にその意向を伝え、理解を得ておくというプロセスが極めて重要です。第二に、「故人とゆっくりお別れする時間が、極端に短い」という点です。通常の葬儀では、お通夜から告別式まで、故人と共に過ごし、多くの人と思い出を語り合う時間があります。このプロセスが、実は、残された人々が死という現実を少しずつ受け入れていくための、大切なグリーフケアの時間となっています。直葬では、この時間が大幅に省略されるため、葬儀が終わった後、心の整理がつかないまま、「本当にこれでよかったのだろうか」という、言いようのない喪失感や虚しさに襲われることがあるのです。また、「菩提寺との関係」も重要な注意点です。もし、代々付き合いのある菩提寺があり、そのお寺のお墓に納骨を希望する場合、お寺に何の相談もなく直葬を行ってしまうと、宗教的な儀式を経ていないことを理由に、納骨を拒否されてしまう可能性があります。直葬は、多くのメリットを持つ一方で、社会的な繋がりや、心のケアといった、伝統的な葬儀が担ってきた重要な機能を省略する側面も持っていることを、深く心に留めておく必要があります。